研究背景

日本は資源に乏しい国であるが,製造業によって経済活動が成り立っており,大量のエネルギーが必要である.しかし,そのほとんどを諸外国からの資源の輸入によって賄っているため,エネルギー自給率は非常に低い.近年,京都議定書の発効や,COP15の開催で地球温暖化をはじめとした環境問題に注目が集まっている.このような流れの中,環境負荷の低減は世界的に大きな課題であり,温暖化の原因であるCO2の削減や省エネルギーへの取り組みが活発になっている.現在,国内のCO2の排出量はエネルギー転換部門と産業部門で全体の6割にものぼり,これらの部門で改善を進めていくことが重要だといえる.

こうした背景のもと,発電所を主とするエネルギー転換部門では化石燃料に代わるエネルギーを利用する動きがあったが, 2011年3月の東日本大震災により国内のエネルギー事情は大きく変化し,これまで以上に太陽光や風力,地熱などの再生可能エネルギーの利用促進が活発化している.本研究ではそのエネルギー利用の一例として,工場廃熱や地熱(温泉)の利用を取り上げ,比較的低温の熱源を利用するため,その熱エネルギーを低沸点の二次媒体に伝えて高圧の媒体蒸気を発生させてタービンを駆動させるバイナリ発電方式を研究の対象とする.現在,このような有効排熱を熱源として,発電サイクルや冷凍サイクル等に再利用する研究が進められている.

 

研究方法

MP(Maximum Power)サイクル(1)と呼ばれる,ある熱源状態に対して理論的に最大の正味出力を得られるサイクルを基準として,最大出力点において比較対象のサイクルがどの程度熱源からのエネルギーを有効に活用できているかをT-S線図(Sは比エントロピと質量流量の積)において視覚的に評価する.顕熱性熱源に対するこのMPサイクルは,熱交換過程に沿った温度変化に対応して,微小Carnotサイクルの接続系と捉えることができることはIbrahimら(1)によって指摘されている.また,MPサイクルによる評価が熱源と冷却水の両方を考慮したエクセルギ効率と等価であることを確認する.

さらに,省スペース性に関する評価指標としてサイクルで必要な全ての熱交換器における熱コンダクタンスの和の算出を行う.廃熱を利用する発電システムにおいては設置コストの観点から省スペース性が高いことが望ましい.

研究対象としては,作動媒体に代替フロン(R134a, R245fa)を用いたOrganic Rankine Cycle(ORC)と,作動媒体にアンモニア・水混合媒体(Ammonia-Water Mixture:AWM)を用いる構成機器の種類やシステムの複雑さの異なる4つのサイクル,すなわち,Lorentzサイクル,Maloney and Robertsonサイクル,KCS-1,W-MTS(Waseda Mixture Turbine System)の合計6種類のサイクルを取り上げる.

熱源条件の違いによる各サイクルの優劣の変化を調査するため,各サイクルの熱交換器における最小温度差(10[K])等を共通として,熱源に100[°C],150[°C],200[°C]の温排水,250[°C]の排ガスを用いた場合について算定を行う.
(1)O.M.Ibrahim, S.A.Klein, Absorption Power Cycles, Energy, 1996.

文責:関